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その問い掛けに

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その問い掛けに

その問い掛けに、吉田は目を細めた。

 

 そもそも何がきっかけなのかは覚えていないが、突然不思議な夢を見るようになったのだ。

 

 一面に咲き誇る桜と白い沖田は目尻に溜まった涙を拭いながら、楽しそうにニコニコと笑う。

 

 

「そ、それは……

 

「いっつも気難しい顔をしているから。壬生の狼の巣窟に放り込まれて、嫌な気持ちは分かりますけれどね。瘦小腿原理 ああ、良かった。これで私、貴方のことを好きになれそうです」

 

「す、好き!?」

 

 桜花は素っ頓狂な声を上げた。その声の大きさに更に多くの人がこちらへ視線を移す。

 

 

「え、ええ。折角、同じ釜の飯を食うのだから仲良くやっていきたいじゃないですか。ね?じゃあ、帰りましょう。遅くなったら、土方さんからお小言を食らってしまう」

 

 そう言うと、沖田はさっさと歩き出した。その背を追いかけながら、桜花は僅かに口元を緩める。

 

「はい、後ろを向いて下さい」

 

 言われるがままに、沖田へ背を向ければパンパンと小気味良い音を立てて、それらは払い落とされた。

 

 

「良かったですね、見付かったのが私で。これが平助や原田さんならずっと言われるところでしたよ。プッ、ククッ……

 

 そう言っている間も沖田は肩を揺らして笑っている。

 

 それを見ながら、誤魔化せたのであれば良いかと胸を撫で下ろした。だが、余程ツボにはまったのか笑いは止まらない。

 

 若侍が道の往来で大口を開けて笑っているものだから、通行人から注目を浴びる始末だ。

 

 

「い、いつまで笑っているんですか!」

 

 それに耐えきれなくなった桜花は眉を顰めながら、抗議をするように沖田を睨む。

 

「ふふ、あはは……ああ、可笑しい。貴方って案外間の抜けたところがあるんですねぇ」 一方で、借りている裏長屋へと到着した吉田は引き戸を開けた。五畳一間のそこは日が殆ど当たらないために、日中であっても薄暗く肌寒い。

 

 

「お帰りなさいませ。ぶち遅かったですのう」

 

 

 そこへ長州訛りの男が出迎えた。目鼻立ちはすっきりとしており、頬には刀傷がある。闇夜を彷彿とさせるような漆黒の着物に身を包んでいた。うてたら、壬生狼に追い掛けられてね」

 

 式台へ腰掛ける吉田の前に、水を張った桶が置かれる。それで足を洗うと、部屋へ上がった。

 

「ほうでしたか……。ご無事で何よりです」

 

 与三郎と呼ばれた男は、それを片付けながら微かに眉を寄せる。吉田と同じ長州の出で、彼がという被差別民だけの軍を結成する際に、特別その剣才を買われて行動を共にしている従者であった。

 

 

「ところで、壬生狼の入隊試験はどうじゃった」

 

 刀を刀置きへ掛け、羽織を脱ぐ。文机の前へ座りながら、与三郎の方を見やった。

く。甲の評定を貰いましたけえ、入隊は確実かと」

 

「流石じゃ。心配はしちょらんかったが」

 

 

 文机の引き出しから墨や硯、筆と新品の帳面を取り出す。そして背筋を取り出すと、すらすらと今日あった出来事を綴って行った。

 

 

 その脳裏には、琥珀色の瞳を持ったの顔が浮かぶ。

 

──鈴木桜花、と云ったか。あれは不思議な男じゃ。まるで纏う空気が違う。言うなれば、その隣は澄み渡った春の空のように心地が良い。

 

 

──様、吉田様。墨が机へ垂れちょります」

 

「ん、ああ。すまん、考え事をしておった」

 

 

 与三郎の声で我に返った吉田は、懐紙で垂らしたそれを拭き取ると筆を進めた。

 

 その横顔を見ながら、与三郎は目を細める。

 

「何か良いことでも?口元が笑うておりました」

 

「え……、否、た……大したことは無い」

 

 

 左手で口元を隠しながら、さっさと書き終えると筆を置く。僅かに目元を染めながら瞳を伏せた。

 

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