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『あー苦しい……。何で人を好きになるって苦しい事ばっかりなん……。』
三津の目に涙が滲んできた。それに気付いたセツが優しく背中を撫でた。
「どうしたん?」
「いえっ……。私の人生は上手くいかない事だらけやなって。」
「何言っちょるんよ。まぁだこれからよ。上手くいかん事だらけでも必死に抗って,最後に待っとる幸せだけを思い描いとったらいいそ。私には見えるで?幸せそうに笑っとるお三津ちゃん。」
セツは笑わんと幸せは来ないのよと三津の頬を摘んで無理矢理口角を引っ張り上げた。
「ふひひ。」
引っ張られた状態で笑ったから変な笑い声が出た。それを聞いてセツも笑った。
「配膳中辛くなったらここに逃げり。構わんけぇ。」 瘦小腿原理
「セツさんありがと。」
甘やかされてばかりではいけない。いい加減しっかりしないと。三津は気合を入れ直して表情をしゃきっとさせた。
『九一さんを見なければ多分大丈夫。』
平常心を保つにはそれしかない。若干緊張しながら広間に配膳に向かった。
配膳が整う頃にちらほら隊士達が集まりだす。そうすると緊張感も増すし,心臓は早鐘を打つ。
「あー腹減ったぁ。」
「高杉さんお帰りなさい。今日も泊まりかと思って高杉さんの分無いです。」
「嘘やろ!?腹の虫めっちゃ鳴いとる!!」
聞くか?聞くか?と着物をはだけさせて三津に迫った。「脱がんでも聞こえます!冗談ですよ,高杉さんの分もちゃんとありますから早よ座って。」
高杉の登場に少し心臓は落ち着いた。そこへ山縣もやって来て俺味噌汁多め!と背中を叩かれた事で気分も落ち着いた。今日の山縣は本当にいい仕事をする。
「晋作帰っとったん?夕餉もあっちで食って来いや。」
入江の声に少し体が跳ねたが背を向けて顔を見ないようにした。そしてなるべく自然に距離を取るように他の隊士の世話を焼くふりをした。
「夕餉食ったらその後俺まで食われてまた帰って来られんやろが。一滴残らず出し尽くされるかと思ったわ。」
それを聞いた面々はどっと笑って羨ましいなぁと声を上げた。
「三津さんは九一に抱かせてやったかー?」
「は!?阿呆ちゃう!?する訳ないでしょうが!!高杉さんの阿呆ぅ!!」
ここで何て事を言うんだと高杉の背後に駆け付けて後頭部をぶん殴った。せっかく平静を取り戻せたのに入江が女将と居た光景を思い出してしまった。
『私が中途半端な事したからきっと九一さん物足りんくて……。』
女将の所へ行ったんだと勝手に思い込んだ。でもそれをとやかく言えやしない。むしろそっちの方が健全だ。人妻と関係持つより独り身の二人が求め合う方が健全だ。
「三津?」
入江に顔を覗き込まれそうになって三津は咄嗟に逸した。
「阿呆な事言っとらんと早よ食べてくださいね!いっぱい食べていっぱい寝て体休めて下さいっ!」
そう言って三津は広間を飛び出した。明らかに様子がおかしい三津をすぐに入江が追おうとしたが山縣がそれを制した。
「ここは俺が行く。」
そう言うって三津の後を追いかけた。呆然とそれを見送る入江の側にすっとセツが近寄った。
「今日一日ずっとお三津ちゃんに付いとったそ。やけぇ今日は山縣さん最後まで面倒見ようとしとるんよ。」
「あ?有朋が一日?九一お前何しとったそ?」
何で三津の傍を離れたんだと眉間にシワを寄せた。
「いや……戦の報告に宮城さんとこ行っちょって……。」
「連れてったら良かったやろが。」
それを言われて押し黙った。それから後で説明するから今は触れないでくれと小声で伝えた。
三津は早々に台所へ逃げ帰った。離脱が早すぎて情けない。
「嫁ちゃん。」
「山縣さん……。私全然しっかり出来ない。」
駄目ですねぇと覇気のない顔で笑った。
「うん,出来んで当たり前やで。無理すんな。きつかったら白石さんとこ行こう。もう仕事とかいいけぇ。」
それよりも気持ちを整える方が先だと諭した。